指先の力学モデリング

指先のMR画像（図1）の各スライスに対して，末節骨と指表面の輪郭を抽出し，すべてのスライスにおける輪郭を接続することにより，末節骨と指表面の三次元形状を得た．皮膚の厚みを一定値の1mmと仮定し，指表面を厚みの分だけ縮小することで，皮下組織の表面とした．これらの表面を有限要素ソフトウェアABAQUSにインポートし，指先の幾何モデル（図2）を構築した．末節骨，皮下組織，皮膚は弾性体であると仮定し，それぞれのヤング率，ポワソン比，密度の値を定め，指先の力学モデルを構築した．

構築した指先モデルが表面に接触し，その上を滑るダイナミックシミュレーションを実施した（図3）．初期滑りが接触領域の周辺で生じ，滑りが中央部に向かって拡大し，最終的に全体の滑りに至るという初期滑り現象を，構築した力学モデルが模擬できることがわかった．さらに，指表面と指内部のミーゼス応力を解析した結果，接触領域の境界で応力の値が大きいことがわかった．

図1　指先のMR画像 図2　指先の幾何モデル
図3　指先の滑りシミュレーションの結果